2021年11月30日

2021年衆院選:比例区選挙における死票と投票価値の格差

比例区の死票(全国).jpg比例区の死票(東北).jpg比例区の死票(北海道).jpgドント式計算.jpg【要旨】現行の比例区選挙では理想的な議席配分方式と比べて16議席程度の死票が発生する。維新と共産は東北ブロックより北海道ブロックの方で得票率が高いにもかかわらず、東北ブロックで議席を獲得できて北海道ブロックでは議席を獲得できていない(投票価値の格差)。定数や区割りを変えなくても議席配分方式を変えるだけで、これらの死票を3議席程度に削減するとともに両ブロックの投票価値の格差を解消できる。

既に下記記事で衆院選比例区選挙でも死票が相当発生することを説明しました。全国を11ブロックに細切れすることで1ブロック当たりの議席定数が少なくなっていることと、比較大政党に有利な議席配分方式のドント式を採用していることが原因です。これらの死票は、全国一括集計・ドント式で議席配分した場合と比較して、全国で議席数にして15議席に上りました。

2021年衆院選比例区:全国一括集計した得票数で比例配分した場合の議席数(比例区でも死票が発生する)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484286009.html

今回は、現行法の議席配分方式をヘア式最大剰余法とも比較するとともに、現行法との乖離具合を折れ線グラフで分かりやすく視覚化しました。

比例代表制はざっくりいって、各党に「得票率×定数」の議席を配分する制度です。例えば、定数8の北海道ブロックにおける得票率×定数は、自由民主党が2.7議席、立憲民主党が2.1議席、公明党が0.9議席、日本維新の会が0.7議席、日本共産党が0.6議席などとなっています。当然、小数点以下の議席というものはないので、実際には比例配分のための特別な計算方法を得票数に適用して各党に議席を配分します。

この議席配分方式には種々の方法がありますが、それは当選基数(1議席を獲得するに要する得票数)という基準をめぐる考え方の違いによります。現行法では、最高平均方式の一種であるドント式が採用されています。ドント式は、各政党の得票数を獲得議席数としての意味を持つ自然数(1、2、3…)で割り、当選基数としての意味を持つ結果(割り算の商)の高い順に各党に議席を割り当てる方式です。この方式は当選基数が高めになるので、大政党ほど有利な結果をもたらします。

この説明だけでは分かりにくいと思うので、北海道ブロックを例に、実際にエクセルでどのように計算するのかを画像でご紹介しておきます。

これに対して基数式の一種であるヘア式最大剰余法は、各党について得票率×定数を計算し、まずその商の整数部分の議席を配分し、残りの議席を小数点以下の部分の高い政党から順に割り当てる方式です。この方式は小政党や無所属候補(現行法では比例区に立候補できない)にも配慮した結果をもたらします。

両方式について全国一括集計の場合と11ブロックの場合で計算した結果を示したのがグラフです。全国一括集計・ヘア式最大剰余法のラインが得票率×定数のラインにほとんど重なり、実際の11ブロック・ドント式のラインが得票率×定数のラインから乖離していることが明らかです。11ブロック・ヘア式最大剰余法は社民以下の小政党の死票を救済できていません。

実際の11ブロック・ドント式を全国一括集計・ヘア式最大剰余法、全国一括集計・ドント式、11ブロック・ヘア式最大剰余法と比べた場合の死票はそれぞれ、16議席、15議席、13議席分となります。

また重大なのは、維新と共産は東北ブロックより北海道ブロックの方で得票率が高いにもかかわらず、東北ブロックでそれぞれ1議席ずつを獲得し、北海道ブロックでは1議席も獲得できていない点です。私のこの辺の問題を「投票価値の格差」ととらえています。少なくとも、比例区選挙でも少なすぎる定数や議席配分方式が死票を生み出す問題については、ご理解いただけるものと思います。

どう解決するか。制度の抜本改正が望ましいのですが、現実的には定数を増やすことへの抵抗があると予想されるので、全国一括方式で議席を配分するか、小政党や無所属候補にも配慮したヘア式最大剰余法などの議席配分方式に切り替えるのが次善策となるでしょう。

上記の通り、現行の定数と11ブロックを前提としても、ヘア式最大剰余法なら死票を3議席程度に抑えることが可能です。それに伴い、「投票価値の格差」についても、少なくとも今回の東北ブロックと北海道ブロックの例では解消されます。


太田光征


posted by 風の人 at 00:16 | Comment(0) | 一般

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。