1.比例区得票率の数字だけを眺めれば、2017年の希望の党の票が2021年に維新・国民・れいわ(3党)に流れただけのように見えるが、無党派層が21年は自民と立民から大きく離れるなどしているため、希望から3党への票移動だけに限らない票移動があったと思われる。
2.立民支持者が比例区で共産へ投票した割合の4%は互恵原則に照らして低すぎ。
得票率の表面的な違いだけを見れば、2017年から2021年で大きく変化したのは、希望の党の解党に伴う同党得票率の消滅、日本維新の会の大幅増、衆院に新規参入したれいわ新撰組の得票獲得で、数字の上では17年の希望、維新の合計が21年の維新、希望の流れを組む国民民主党、れいわの合計にほぼ一致しています。
しかし、下記の共同通信出口調査(東京新聞)によれば、比例区東京ブロックにおいて、無党派層は17年と比べ、立憲民主党からも自民党からも離れ、維新と日本共産党への票を増やし、れいわにも投票しているのであり、立民や自民、共産にからむ票移動があったはずです。共産党については、無党派層の投票先としての割合が17年の10.9%から21年の13.4%へと意味ある増え方をしています。
衆院選・比例東京 無党派層、立民に投票23.7% 前回比8.2ポイント減 他党に分散 出口調査分析:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/140422
下記の共同通信出口調査(毎日新聞)によれば、東京ブロックに限らず、無党派層は全国でも立民と自民から離れ、維新への票を増やしています。
無党派層 立憲支持が最多24%、維新伸び21% 共同通信出口調査(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/57926db23df84942ba23ae9d32243852df5a9d92
共産党は比例区東京ブロックにおいて無党派の支持を拡大しているものの、共産党の同ブロックにおける得票率は17年の10.37%から21年の10.39%へとほとんど増えていません。
増えていないどころか、全国レベルにおいて、共産党は比例区の得票率を17年の7.9%から21年の7.2%へと減らしていることから、総体として同党の得票率を減らす要因が働いたと考えられます。少なくとも比例区東京ブロックにおいて共産党は「無党派層」の支持を拡大しているので、「共産党支持者」から他野党、おそらくれいわ新撰組などに票が流れたと考えるのが自然です。
無党派層が立民からも自民からも離れたのに、なぜ立民の比例区得票率がほとんど変わらず、自民が微増したのか。現立憲民主党は旧民進党から衣替えした旧希望の党の一部と旧希望の党に流れなかった残留組としての旧立憲民主党が再合流してできた政党なのだから、旧希望に投票した有権者の一部が現立民に投票してもおかしくありません。旧希望への投票者のうち、無党派とは自己認識していない層からも、現立民に投票した有権者がいても当然なのです。自民が微増したのも、旧希望に投票した自民支持者が古巣に戻ったということか。
旧希望と現立民の関係からして、現立民の比例区得票率が17年と比べて増えて当然なわけですが、その増え方が少なすぎると思えるのは、無党派層が離れたことが影響していると同時に、立民支持者からもれいわに流れたからではないのか。
結局、下記の図式で、政党間の票移動のつじつまがほぼ合うと思います。
旧希望(17.4%)・17年維新(6.1%)の計23.4%→維新(14.0%)・国民(4.5)の計18.5%(「差4.9%」)
旧希望→立民→れいわ(3.9%)
共産→れいわによる共産の微減
旧希望→自民による自民の微増
一方、上記共同通信出口調査(毎日新聞)によれば、「立憲支持層のうち、比例で立憲に投票したと回答した人は86%に上り、共産と答えた人は4%、自民は1%だった」とのこと。立民から共産への4%という数字は低すぎです。立民は小選挙区で野党統一候補として優遇されているのだから、互恵原則に照らして、比例区は立民以外の立憲野党を優遇しましょう。
太田光征