【要旨】自・共(社)一騎打ちが実現した4小選挙区について、票の一本化指標「野党統一候補の小選挙区得票数÷立憲野党の比例区得票数」は21年衆院選が17年衆院選より後退するとともに、21年はすべてが1未満となっており、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されたとはいえない。
多くの小選挙区で立憲民主党の候補が野党統一候補となっていますが、この場合は立憲野党の票のほとんどが統一候補に流れているものと思われます。では、立民以外の候補が野党統一候補になる場合はどうでしょうか。
17年衆院選と21年衆院選に共通して完全な与野党対決の一騎打ちが実現したのは4選挙区のみですが、これらの選挙区について比較検証してみます。立憲野党の票が小選挙区で野党統一候補に一本化されたかどうかを測定するための指標としては、「野党統一候補の小選挙区得票数÷立憲野党の比例区得票数」が使えます。
野党統一候補は17年の香川県第3選挙区の社民党以外は日本共産党で、立憲野党は17年が立民・共産・社民、21年がこれらにれいわ新撰組を加えた範囲となります。
全体として、一本化指標は21年が17年と比べて減少するとともに、21年はすべてが1未満となっており、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されたとはいえない状況です。これはなぜか。
れいわが新規参入した点が17年と21年で異なるわけですが、れいわに比例区で投票した層の中に、従来は立民・共産・社民以外に投票してきた有権者が含まれるためかもしれません。
理由がどうであれ、確かにこれら選挙区は野党が与党にはるかに及ばない選挙区であるとはいえ、野党統一候補に立憲野党の票が一本化されないことは、野党選挙共同の信義にもとるもので、他選挙区の立民の野党統一候補に共産・社民・れいわの支持者が投票する意慾を削ぐ方向に働くことはあっても、意慾を高めることはないでしょう。
野党選挙共同の取り組みでは、自分の選挙区のことだけ考えればよいのだ、という意見も見られますが、そうではありません。支持する政党と野党統一候補の所属政党が異なる場合、投票意慾というものが野党統一候補の勝敗に大きく影響します。こうした投票意慾は、互恵原則が貫かれたかどかの評価を通じて、全国で相互に影響を及ぼし合う関係にあるのです。
ただ一方、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されない場合、統一候補の所属政党や候補者本人にそれだけの魅力しかない、ということでもあり、魅力を高めるための主たる責任は当該の政党と候補者にあるというほかありません。
野党統一候補への一本化はあくまで目的ではなく手段、必要十分条件ではなく必要条件であり、票レベルの一本化を担保するための取り組みが別途、必要になります。
太田光征
2021年11月10日
2021年衆院選:自・共(社)一騎打ち区で立憲野党の票は一本化されたか
posted by 風の人 at 19:49
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