2021年11月30日

2021年衆院選:比例区選挙における死票と投票価値の格差

比例区の死票(全国).jpg比例区の死票(東北).jpg比例区の死票(北海道).jpgドント式計算.jpg【要旨】現行の比例区選挙では理想的な議席配分方式と比べて16議席程度の死票が発生する。維新と共産は東北ブロックより北海道ブロックの方で得票率が高いにもかかわらず、東北ブロックで議席を獲得できて北海道ブロックでは議席を獲得できていない(投票価値の格差)。定数や区割りを変えなくても議席配分方式を変えるだけで、これらの死票を3議席程度に削減するとともに両ブロックの投票価値の格差を解消できる。

既に下記記事で衆院選比例区選挙でも死票が相当発生することを説明しました。全国を11ブロックに細切れすることで1ブロック当たりの議席定数が少なくなっていることと、比較大政党に有利な議席配分方式のドント式を採用していることが原因です。これらの死票は、全国一括集計・ドント式で議席配分した場合と比較して、全国で議席数にして15議席に上りました。

2021年衆院選比例区:全国一括集計した得票数で比例配分した場合の議席数(比例区でも死票が発生する)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484286009.html

今回は、現行法の議席配分方式をヘア式最大剰余法とも比較するとともに、現行法との乖離具合を折れ線グラフで分かりやすく視覚化しました。

比例代表制はざっくりいって、各党に「得票率×定数」の議席を配分する制度です。例えば、定数8の北海道ブロックにおける得票率×定数は、自由民主党が2.7議席、立憲民主党が2.1議席、公明党が0.9議席、日本維新の会が0.7議席、日本共産党が0.6議席などとなっています。当然、小数点以下の議席というものはないので、実際には比例配分のための特別な計算方法を得票数に適用して各党に議席を配分します。

この議席配分方式には種々の方法がありますが、それは当選基数(1議席を獲得するに要する得票数)という基準をめぐる考え方の違いによります。現行法では、最高平均方式の一種であるドント式が採用されています。ドント式は、各政党の得票数を獲得議席数としての意味を持つ自然数(1、2、3…)で割り、当選基数としての意味を持つ結果(割り算の商)の高い順に各党に議席を割り当てる方式です。この方式は当選基数が高めになるので、大政党ほど有利な結果をもたらします。

この説明だけでは分かりにくいと思うので、北海道ブロックを例に、実際にエクセルでどのように計算するのかを画像でご紹介しておきます。

これに対して基数式の一種であるヘア式最大剰余法は、各党について得票率×定数を計算し、まずその商の整数部分の議席を配分し、残りの議席を小数点以下の部分の高い政党から順に割り当てる方式です。この方式は小政党や無所属候補(現行法では比例区に立候補できない)にも配慮した結果をもたらします。

両方式について全国一括集計の場合と11ブロックの場合で計算した結果を示したのがグラフです。全国一括集計・ヘア式最大剰余法のラインが得票率×定数のラインにほとんど重なり、実際の11ブロック・ドント式のラインが得票率×定数のラインから乖離していることが明らかです。11ブロック・ヘア式最大剰余法は社民以下の小政党の死票を救済できていません。

実際の11ブロック・ドント式を全国一括集計・ヘア式最大剰余法、全国一括集計・ドント式、11ブロック・ヘア式最大剰余法と比べた場合の死票はそれぞれ、16議席、15議席、13議席分となります。

また重大なのは、維新と共産は東北ブロックより北海道ブロックの方で得票率が高いにもかかわらず、東北ブロックでそれぞれ1議席ずつを獲得し、北海道ブロックでは1議席も獲得できていない点です。私のこの辺の問題を「投票価値の格差」ととらえています。少なくとも、比例区選挙でも少なすぎる定数や議席配分方式が死票を生み出す問題については、ご理解いただけるものと思います。

どう解決するか。制度の抜本改正が望ましいのですが、現実的には定数を増やすことへの抵抗があると予想されるので、全国一括方式で議席を配分するか、小政党や無所属候補にも配慮したヘア式最大剰余法などの議席配分方式に切り替えるのが次善策となるでしょう。

上記の通り、現行の定数と11ブロックを前提としても、ヘア式最大剰余法なら死票を3議席程度に抑えることが可能です。それに伴い、「投票価値の格差」についても、少なくとも今回の東北ブロックと北海道ブロックの例では解消されます。


太田光征
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2021年11月27日

2021年衆院選:立憲民主党は比例区で自由民主党と勝負になっていない

2021年衆院選・小選挙区別比例区得票率(神奈川).jpg2021年衆院選・小選挙区別比例区得票率(千葉).jpg2021年衆院選・小選挙区別比例区得票率(大阪).jpg2021年衆院選・小選挙区別比例区得票率(東京).jpg2021年衆院選:立憲民主党は比例区で自民と勝負になっていない

【要旨】小選挙区別の比例区得票率は自由民主党がほぼ一定で、立憲民主党、日本維新の会、公明党が小選挙区によって比例区得票率に大きな変動がある。立民は自民と勝負しているというより、自民以外の維新・公明という与党グループと野党の間で票を奪い合っている。有権者から見て自民対立民の政権選択選挙になっていない。

小選挙区別の比例区得票率を千葉、東京、神奈川、大阪で算出しました。

千葉では、10、11、12区で自民の比例区得票率が高いものの、自民の比例区得票率は小選挙区の違いによる変動があまりありません。立民の比例区得票率が落ち込んでいる選挙区は、維新ないし公明の比例区得票率が高くなっています。

東京では自民が1、2、25区で特に高いものの、比例区得票率は小選挙区によらずほぼ一定しています。これとは対照的に立民の比例区得票率は小選挙区によって大きく変動しており、特に公明の比例区得票率とは山と谷の関係にあります。維新もかなり比例区得票率が変動していますが、変動幅は立民と公明の中間程度です。

神奈川では、小泉進次郎の11区などを除いて、自民の比例区得票率はかなりきれいな横一線で、小選挙区によって変わりがありません。立民の比例区得票率が落ち込んでいる選挙区は維新・公明・共産・国民・社民の比例区得票率が高い選挙区となっています。

大阪でも、自民の比例区得票率はどの小選挙区でもほとんど差がなく、立民の比例区得票率が低い選挙区は公明の比例区得票率が高いところばかりです。維新は公明と小選挙区でバーター形式の選挙協力をしており、両党の比例区得票率は山と谷の関係にあります。

以上のように、比例区得票率という指標で評価する限り、立民は自民というより、自民以外の与党グループ(維新・公明)や野党と勝負している格好です。いま現在の投票率では、固い自民支持層が一定の比例区得票率を確保し、それ以外の政党、特に立民・維新・公明の間での争いが、今日の選挙の実態といえます。

とても自民対立民の政権交代モードにはなっていません。立民には単独政権や二大政党制などということは諦めてもらいたいものです。


太田光征
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2021年11月21日

2021年衆院選:共・社への野党統一選挙区で立憲野党の票は一本化されたか(都市部)

一本化の実態(都市部).jpg【要旨】東京と大阪で共産・社民の野党統一候補が成立した計8区について、票の一本化指標「野党統一候補の小選挙区得票数÷立憲野党の比例区得票数」はすべてが1未満となっており、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されたとはいえない。

既に地方の自・共(社)一騎打ち区で立憲野党の票が一本化されたとはいえない状況について書きました。

2021年衆院選:自・共(社)一騎打ち区で立憲野党の票は一本化されたか
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484305022.html

都市部ではどうでしょうか。東京と大阪で共産・社民の野党統一候補が成立した計8区(国民民主党が立候補していた選挙区は除外)について、票の一本化指標「野党統一候補の小選挙区得票数÷立憲野党の比例区得票数」を計算してみました。立憲野党は立憲民主党、日本共産党、れいわ新撰組、社民党です。

残念ながら、票の一本化指標はすべて1未満で、立憲4野党支持者の票が共産・社民の統一候補に一本化されたとはいえません。山口県第2区や香川県第3区では票の一本化指標が0.9を超えていますが、東京と大阪ではすべて0.9未満で、平均して0.7台となっています。

念のため、大阪で立民の候補が野党統一候補になった6選挙区について同様の計算をしてみましたが、2区と8区が0.9台となったものの、残るすべてが1を超えており、確かに立憲4野党の票が一本化されたといえる状況を確認できました。

繰り返し言いますが、野党統一候補に立憲野党の票が一本化されないことは、野党選挙共同の信義にもとるものです。これは多くの選挙区で野党統一候補となる立民の候補にも影響します。共産・社民・れいわの野党統一候補に立憲野党の票が一本化されないようでは、これらの支持者が立民の野党統一候補に投票する意慾を削ぐ方向に働くからです。

今回の選挙結果に悔しい思いをしている野党支持者には、真に互恵原則に則った投票をお願いしたいものです。


太田光征
posted by 風の人 at 17:10 | Comment(0) | 一般

2021年11月20日

2014年衆院選から2021年衆院選にかけての各党の比例区得票率の推移

比例区得票率の推移.jpg【要旨】維新は比例区得票率で17年に惨敗、21年は盛り返すも14年より後退。比例区得票率において与野党別の大きな勢力変化はなく、野党内で勢力が変化しただけ。ただし、比較大政党の自民・立民(民主)が伸び、比較中政党の維新・公明と比較小政党の共産・社民が後退する傾向にある。社民は17年より上向いている。

2014年衆院選から2021年衆院選にかけての各党の比例区得票率の推移を分かりやすくグラフで視覚化しておきたいと思います。

瞬間風力政党の旧希望の党が17年の選挙でしか登場しなかったこと、維新の票が17年に旧希望に大量に流れたことなどから、下記の政党を「再編4党」としてまとめると、各党勢力の変化が分かりやすくなるでしょう。

21年:日本維新の会、国民民主党、れいわ新撰組
17年:希望の党、維新
14年:維新、次世代の党、生活の党

グラフの左半分では青で示される14年の比例区得票率が橙で示される21年の比例区得票率に増えており、右半分では逆に減っています。つまり比較大政党の自民と立民(民主)が比例区得票率を伸ばし、比較中政党の維新・公明と比較小政党の共産・社民が比例区得票率を減らしています。

当然、国民とれいわが新規に比例区得票率を確保しています。正確にいえば、社民は17年を谷として21年は得票率を盛り返しています。

維新は17年に比例区得票率で見れば文字通りの惨敗でした。小選挙区も合わせた維新の獲得議席は、14年、21年とも41議席なので、今回の維新の議席増を必要以上に評価する必要はありません。比例区得票率で見れば21年の14.0%は14年の15.7%より減っています。

このように変化の傾向がありますが、与野党別に分けた勢力で見れば大きな変化はなく、単に野党内での勢力変化が起こっただけです。変化の大きな源は共産党の得票減で、17年に共産から旧立民に流れた票が、旧希望の一部と再合流した新立民にとどまっているのが特徴です。

下記記事で示したように、比較小政党の獲得票を死票にしてしまう現行比例区選挙の欠陥ゆえ、立民は比較小政党が獲得してしかるべき4議席分を余計にせしめています。

2021年衆院選比例区:全国一括集計した得票数で比例配分した場合の議席数(比例区でも死票が発生する)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484286009.html

こうした意味で立民は比例区議席を取り過ぎているので、共産・社民から立民への比例区票の移動は好ましくありません。有権者の皆さんには考えていただきたいと思います。

野党内の勢力構成も重要なのですが、野党全体の勢力がこのまま固定されたままでは困ります。立憲野党と市民は政治運動を大幅に見直して、野党支持者だけではなく広く有権者一般の心に届く訴えを開発していく必要があります。


太田光征
posted by 風の人 at 20:24 | Comment(0) | 一般

2021年衆院選:小選挙区での得票率10%要件を比例区での獲得議席数に連動させる仕組みのおかしさ

【要旨】小選挙区制と比例代表制は比較基準が異なる。比例区得票率が10%未満の政党には議席を与えるべからずとはならない。小選挙区で小政党の得票率が少ないのは当然。小選挙区で得票率10%を確保しない候補者が比例区で当選できずに他党に議席が移る仕組みは廃止すべき。

2021年衆院選で特筆すべきことに、公明党は17年より比例区得票率を減らしているにもかかわらず、17年の21議席から21年の23議席へ増やすというウルトラCを成し遂げています。

その一因は、れいわ新撰組の比例区東海ブロックで当選圏内に入った小選挙区との重複立候補者が、比例区での当選要件である小選挙区での得票率10%要件を満たさなかったため、本来のれいわの取り分が公明に移ってしまったことによるものです。

この仕組みはおかしなものです。小選挙区では確かに政党対政党の比較評価がなされている側面がありますが、それは主に比較二大政党間での比較評価であり、あくまでその小選挙区の限られた候補者の間での順位争いにすぎません。ある小選挙区で得票成績が良くない候補者でも、他の小選挙区で立候補すれば良い得票成績を収めることもあり得るので、得票率10%要件をクリアすることも可能になります。

また例えば、比例区で10%程度の得票率を稼ぐ小政党でも、それが小選挙区で候補者を立てれば同様の10%程度の得票率を稼げるかといえば、そうとは限らず、小政党の候補者には小選挙区で票が集まりにくいのです。小選挙区制は、政党対政党の比較評価には不向きの制度です。

また、「復活当選」に対する悪いイメージも、小選挙区制と比例代表制の比較基準が異なることを無視したものです。いまこの日本で比例区得票率が10%未満の政党には議席を与えるべからず、と考える有権者はあまりいないでしょう。小選挙区での得票率10%未満の持つ意味合いは、そういうことなのです。

比例代表制では、足切り条項(阻止条項)として、規定の得票率未満の政党には議席を与えないという制度設計もあります。私は足切り条項に賛成しませんが、これはあくまでも比例区選挙の結果としての政党対政党の比較評価の問題であり、その限りで一定の得票率を満たさない政党は満たす政党より得票成績が悪いから議席を与えない、という考え方が成り立つわけです。

ところが小選挙区での得票率10%要件を比例区での獲得議席数に連動させる仕組みは、比例区の足切り条項とは似て非なるものです。現行法制の下では、あくまで政党対政党の比較評価は比例区に委ねられているのです。にもかかわらず、比例区で勝負がついて確保されるべき議席数を確保できないのはおかしい。

小選挙区制と比例代表制は異なる比較基準を採用しているにもかかわらず、これらを連動させて、小選挙区での比較成績で比例区の獲得議席数に影響を及ぼす仕組みは、比例区を11ブロックに細分化して、小政党の得票を死票にする仕掛けと同様の効果を持ちます。

以上のように、狭い小選挙区での得票率10%要件を比例区の獲得議席数に連動させる仕組みにはまったく合理性がありません。

現行比例区制度の骨格を当面維持するにしても、より比例性が確保される最大剰余法などの議席配分計算法や全国一括式の議席配分法などへの改正と合わせ(下記記事参照)、小選挙区の得票率10%要件を比例区の獲得議席数に連動させる仕組みは直ちに廃止する法改正が必要です。

2021年衆院選比例区:全国一括集計した得票数で比例配分した場合の議席数(比例区でも死票が発生する)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484286009.html


太田光征
posted by 風の人 at 15:06 | Comment(0) | 一般

2021年11月14日

2021年と2017年の比例区得票率の比較

比例区得票率の対前回比.jpg【要旨】

1.比例区得票率の数字だけを眺めれば、2017年の希望の党の票が2021年に維新・国民・れいわ(3党)に流れただけのように見えるが、無党派層が21年は自民と立民から大きく離れるなどしているため、希望から3党への票移動だけに限らない票移動があったと思われる。
2.立民支持者が比例区で共産へ投票した割合の4%は互恵原則に照らして低すぎ。

得票率の表面的な違いだけを見れば、2017年から2021年で大きく変化したのは、希望の党の解党に伴う同党得票率の消滅、日本維新の会の大幅増、衆院に新規参入したれいわ新撰組の得票獲得で、数字の上では17年の希望、維新の合計が21年の維新、希望の流れを組む国民民主党、れいわの合計にほぼ一致しています。

しかし、下記の共同通信出口調査(東京新聞)によれば、比例区東京ブロックにおいて、無党派層は17年と比べ、立憲民主党からも自民党からも離れ、維新と日本共産党への票を増やし、れいわにも投票しているのであり、立民や自民、共産にからむ票移動があったはずです。共産党については、無党派層の投票先としての割合が17年の10.9%から21年の13.4%へと意味ある増え方をしています。

衆院選・比例東京 無党派層、立民に投票23.7% 前回比8.2ポイント減 他党に分散 出口調査分析:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/140422

下記の共同通信出口調査(毎日新聞)によれば、東京ブロックに限らず、無党派層は全国でも立民と自民から離れ、維新への票を増やしています。

無党派層 立憲支持が最多24%、維新伸び21% 共同通信出口調査(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/57926db23df84942ba23ae9d32243852df5a9d92

共産党は比例区東京ブロックにおいて無党派の支持を拡大しているものの、共産党の同ブロックにおける得票率は17年の10.37%から21年の10.39%へとほとんど増えていません。

増えていないどころか、全国レベルにおいて、共産党は比例区の得票率を17年の7.9%から21年の7.2%へと減らしていることから、総体として同党の得票率を減らす要因が働いたと考えられます。少なくとも比例区東京ブロックにおいて共産党は「無党派層」の支持を拡大しているので、「共産党支持者」から他野党、おそらくれいわ新撰組などに票が流れたと考えるのが自然です。

無党派層が立民からも自民からも離れたのに、なぜ立民の比例区得票率がほとんど変わらず、自民が微増したのか。現立憲民主党は旧民進党から衣替えした旧希望の党の一部と旧希望の党に流れなかった残留組としての旧立憲民主党が再合流してできた政党なのだから、旧希望に投票した有権者の一部が現立民に投票してもおかしくありません。旧希望への投票者のうち、無党派とは自己認識していない層からも、現立民に投票した有権者がいても当然なのです。自民が微増したのも、旧希望に投票した自民支持者が古巣に戻ったということか。

旧希望と現立民の関係からして、現立民の比例区得票率が17年と比べて増えて当然なわけですが、その増え方が少なすぎると思えるのは、無党派層が離れたことが影響していると同時に、立民支持者からもれいわに流れたからではないのか。

結局、下記の図式で、政党間の票移動のつじつまがほぼ合うと思います。

旧希望(17.4%)・17年維新(6.1%)の計23.4%→維新(14.0%)・国民(4.5)の計18.5%(「差4.9%」)
旧希望→立民→れいわ(3.9%)
共産→れいわによる共産の微減
旧希望→自民による自民の微増

一方、上記共同通信出口調査(毎日新聞)によれば、「立憲支持層のうち、比例で立憲に投票したと回答した人は86%に上り、共産と答えた人は4%、自民は1%だった」とのこと。立民から共産への4%という数字は低すぎです。立民は小選挙区で野党統一候補として優遇されているのだから、互恵原則に照らして、比例区は立民以外の立憲野党を優遇しましょう。


太田光征
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2021年衆院選:野党選挙共同は二大政党制を実現するための手段にあらず

【要旨】
枝野幸男議員の立憲民主党代表辞任で野党選挙共同が発展する保証なし。
野党選挙共同は二大政党制を実現するための手段にあらず。

枝野幸男さんがこの記者会見で示した見解には本当にがっくりです。

2021年11月12日 #枝野会見 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wHmrLbD6XeE


候補者一本化の必要性は認めながらも、野党連合政権に向けた野党選挙共同に後ろ向きで、自分の意図するところがメディアに正確に伝わらないことを強調する枝野さん。なぜこうなるかというと、枝野さんが野党候補の一本化に求めるものが二大政党制の実現にあるのに、それを説明しないからでしょう。だからメディアも正確に報道しようがありません。

野党選挙共同や政党再編に関する質問に対して、枝野さんは直接的に答えず、小選挙区制中心の選挙制度が与野党1対1の構図を要請しているとの主張を返すのみで、二大政党制という明確な言葉でその構図を作る必要性を語ろうとはしません。曖昧な言葉をメディアや世間に投げて、正確に伝わらないといっているのです。

https://youtu.be/wHmrLbD6XeE?t=928
一本化を求める市民の要望に応えられたかとの記者の質問に対して、枝野さんは「日本の選挙制度が、衆議院の、首班指名に優越感を持つ衆議院の選挙制度が小選挙区が軸の選挙制度である以上は、2つの政治勢力で競い合うということを想定している選挙制度であると。従ってですね、その政権を取ろうとする勢力がしっかりと連携をするということが、選挙制度から必然的に求められているというのが、私のこの問題に対する基本的な認識です」と答えています。

https://youtu.be/wHmrLbD6XeE?t=1171
国民民主党との合流などに関する質問に対して枝野さんは、「これもそれぞれの政治家の皆さんの判断ですから、私は先ほど申しました通り、今の選挙制度を取っている限りはですね、一定の幅の中で一つの政党であるべきだし、違いがあっても共有できる部分で共有してできるだけ1対1の構造を作るということが選挙制度から要請されていると私は思っていますが、それはそれぞれの政治家の判断ですので」と答えています。


横田一さんやIWJが核心を突く質問を行っても、枝野さんは意見開陳を含むからという理由で答えません。

横田一さんによる質問
https://youtu.be/wHmrLbD6XeE?t=1868
枝野さん「決して一つの政権を作るわけでもないし、もちろん閣内でもない。政権そのものに直接コミットするわけでもないにもかかわらず、あたかもそれらが前提であるかのように受け止められてしまった力不足、これが最大の反省です」
IWJによる質問
https://youtu.be/wHmrLbD6XeE?t=2073


枝野さんによれば、記者会見は中立的なメディアに対するものだそうです。中立的なメディアはないし、意見に基づいて各記者が質問をするのです。別のフリーから、会見の少なさが正確に伝わらない原因ではと問われ、週一会見を求められても、枝野さんは積極的に賛同しません。

横田一さんやIWJが本気の野党選挙共同について質問しても枝野さんは答えないし、立憲民主党の選挙結果を不当に評価するメディアの報道をどう思うかとIWJが質問しても枝野さんは答えません。

大変重大なのは、枝野さんが、横田一さんやIWJなどによる質問を現場の記者が困っていると発言してみたり、「争点は有権者が決めるもの」(文脈では緊急事態条項改憲は争点にあらず、という意味)と発言してみたり、質問の中身に答えないどころか、政治とメディアの関係について今日最も克服されるべき問題について、後ろ向きの見解を示していることです。

枝野さんは会見で、ノイジーマイノリティーよりサイレントマジョリティーの声を優先するかのように主張しています。緊急事態条項改憲や南西諸島でのミサイル基地軍拡の危険性を訴える声はノイジーマイノリティーで「ボトムアップ政治」でくみ取るべき声ではないというのでしょうか。メディアが公正な政治報道を怠っている状況の下で最もらしい「争点は有権者が決めるもの」という発言の持つ意味は重大です。政党のイニシアチブとまさにボトムアップ政治、そして公正な報道という、まっとうな政治を実現するための2つの要素について、真摯に向き合う姿勢がまったく感じられません。

このように野党連合政権(閣外か閣内かは別にして)を目指した野党選挙共同に後ろ向きな枝野さんですが、代表を辞めればこうした野党選挙共同が発展するかといえば、その保証はありません。

自民が立民より議席を減らしたのに、メディアは今回の衆院選における野党選挙共同の成果を不当にけなしています。この不当な評価を枝野さん辞任と抱き合わせにして、立憲民主党内では新代表の選挙を通じ、野党選挙共同が後退に向かう恐れがあります。新代表候補の1人である泉健太さんは、維新との連携を主張するような方です。

野党選挙共同に後ろ向きな枝野さんの辞任を求める圧力が、結局は野党選挙共同つぶしに荷担しかねない状況を作り出していることを反省する必要があると思います。無条件に枝野辞めるなでもなく、枝野さんの責任は野党選挙共同を本気のものにすること、という世論を高めることが必要だったのです。

今後の野党選挙共同にとって大事なことは、それが二大政党制を実現するための手段ではないことを確認することだと思います。また、不当な報道を押し返す気構えとその実践なくして野党の勝利はあり得ません。


太田光征
posted by 風の人 at 14:48 | Comment(0) | 一般

2021年11月10日

2021年衆院選:自・共(社)一騎打ち区で立憲野党の票は一本化されたか

一本化の実態.jpg【要旨】自・共(社)一騎打ちが実現した4小選挙区について、票の一本化指標「野党統一候補の小選挙区得票数÷立憲野党の比例区得票数」は21年衆院選が17年衆院選より後退するとともに、21年はすべてが1未満となっており、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されたとはいえない。

多くの小選挙区で立憲民主党の候補が野党統一候補となっていますが、この場合は立憲野党の票のほとんどが統一候補に流れているものと思われます。では、立民以外の候補が野党統一候補になる場合はどうでしょうか。

17年衆院選と21年衆院選に共通して完全な与野党対決の一騎打ちが実現したのは4選挙区のみですが、これらの選挙区について比較検証してみます。立憲野党の票が小選挙区で野党統一候補に一本化されたかどうかを測定するための指標としては、 「野党統一候補の小選挙区得票数÷立憲野党の比例区得票数」が使えます。

野党統一候補は17年の香川県第3選挙区の社民党以外は日本共産党で、立憲野党は17年が立民・共産・社民、21年がこれらにれいわ新撰組を加えた範囲となります。

全体として、一本化指標は21年が17年と比べて減少するとともに、21年はすべてが1未満となっており、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されたとはいえない状況です。これはなぜか。

れいわが新規参入した点が17年と21年で異なるわけですが、れいわに比例区で投票した層の中に、従来は立民・共産・社民以外に投票してきた有権者が含まれるためかもしれません。

理由がどうであれ、確かにこれら選挙区は野党が与党にはるかに及ばない選挙区であるとはいえ、野党統一候補に立憲野党の票が一本化されないことは、野党選挙共同の信義にもとるもので、他選挙区の立民の野党統一候補に共産・社民・れいわの支持者が投票する意慾を削ぐ方向に働くことはあっても、意慾を高めることはないでしょう。

野党選挙共同の取り組みでは、自分の選挙区のことだけ考えればよいのだ、という意見も見られますが、そうではありません。支持する政党と野党統一候補の所属政党が異なる場合、投票意慾というものが野党統一候補の勝敗に大きく影響します。こうした投票意慾は、互恵原則が貫かれたかどかの評価を通じて、全国で相互に影響を及ぼし合う関係にあるのです。

ただ一方、立憲野党の票が野党統一候補に一本化されない場合、統一候補の所属政党や候補者本人にそれだけの魅力しかない、ということでもあり、魅力を高めるための主たる責任は当該の政党と候補者にあるというほかありません。

野党統一候補への一本化はあくまで目的ではなく手段、必要十分条件ではなく必要条件であり、票レベルの一本化を担保するための取り組みが別途、必要になります。


太田光征
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2021年11月09日

2021年衆院選比例区:全国一括集計した得票数で比例配分した場合の議席数(比例区でも死票が発生する)

全国一括.jpg全国一括集計した得票数で比例配分した場合のシミュレーションです。全国一括式、つまり全国1ブロック式では、比較大政党の議席が減少し、比較中政党はほとんど変わらず、比較小政党の議席が増えます。

自民:10議席減
立民:4議席減
維新:変化なし
公明:1議席減
共産:4議席増
国民:3議席増
れいわ:3議席増
社民:3議席増
N裁:2議席増

逆にいえば、現行の衆院比例区は定数が細切れにされた11ブロックごとに議席が配分されるため、小選挙区と同様に死票が発生するのです。

比例区における当選基数(1議席の獲得に要する票数)≒総得票数(57,465,969)÷ 総定数(176)= 326,511票という関係なので、小政党は全国で32万票以上を獲得していても、11ブロックに分かれることで、各ブロックで当選基数未満の得票しか得られないところが多数に上り、これらのブロックで獲得した票が死票となります。

これらの死票は今回、自民、立民、公明がかすめとり、議席数にして15議席に上りました。死票を本来獲得すべき政党に返す意味でも、立憲野党支持者は比例区において努めて立民以外に投票するのが適当なのです。

ただし、下記投稿でも分かるように、野党の小政党に票がばらけることで、上記と同じ理屈により、野党全体の獲得議席数が減少します。例えば、逆に、3ないし4議席を獲得したれいわの票を立民と共産に按分するシミュレーションでは、自民が5議席を減らして、野党が8議席を獲得できます。

2021年衆院選比例区:小政党の得票数をかすめ取る大政党(立憲民主党と日本共産党の議席減の一因)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484285890.html

でも、比例区まで死票を気にしては制度の理念が死んでしまうので、比例区では小政党でも素直に支持政党に投票すべきと思います。これによる野党議席の目減り分は、小選挙区での野党統一候補で挽回すればよいのです。

現行制度の骨格を維持するとしても、議席配分を全国一括式に変えるか、より比例性が確保される最大剰余法などの議席配分計算法に変えるくらいの改革を早急に行うべきです。

選挙制度の改正を含む公選法の抜本改革を野党の統一政策にしましょう。


太田光征
posted by 風の人 at 15:12 | Comment(0) | 一般

2021年衆院選比例区:小政党の得票数をかすめ取る大政党(立憲民主党と日本共産党の議席減の一因)

れいわ按分.jpgこれまで立憲民主党や日本共産党に投票してきた層のかなりが今回、れいわ新撰組に投票したものと推定されます。これが立民と共産の議席減の一因でしょう。(ただし、立民については、比較対象を希望の党の一部が再合流した後の今回の公示前勢力とするのか、希望と分かれて戦った2017年衆院選後の勢力とするのか、問題となります。)

2021年衆院選比例区において、各ブロックごとにれいわ票を立民と共産の得票率に応じて立民と共産に按分した場合の議席の移動を計算してみました。つまり、れいわが比例区に立候補しない場合のシミュレーションです。

結果は、自民党が5議席減らして、立民、共産、国民民主党がそれぞれ4、3、1議席増やします。れいわが実際に比例区で獲得したのは3議席です(小選挙区の得票率10%要件を満たさないため議席を逃してしまった分を含めれば4議席)。

野党の比較小政党が数議席の議席を獲得するための代償が、それを上回る自民の議席増、すなわち野党全体での同数の議席減、ということになります。

このように現行の衆院選比例区は各ブロックの定数が少なすぎて、小政党の得票数の多くが死票となってしまいます。主要政党が8政党もあるというのに、特に四国ブロックの定数6という一桁台の定数は、比例代表制の定数とはいえません。

こうした選挙制度を恨むことはあっても、れいわを恨むことなかれ。いくら欠陥のある現行の衆院選比例区選挙とはいえ、ここでも死票を気にする投票をしては、制度の理念が死んでしまいます。比例区では支持政党に素直に投票すべきです。

選挙制度改正を含む公選法の抜本改革を野党の統一政策にしましょう。


太田光征
posted by 風の人 at 15:02 | Comment(0) | 一般

2021年衆院選:国民民主党との距離感

国民民主党は市民連合が調整役となった4野党選挙共同の枠組みに入りませんでした。ただ、選挙結果を見れば、同党は日本共産党と同党の勢力となっているし、国民の前身である旧希望の党出身の議員が立憲民主党の中で増えました。

下記記事を見る限り、少なくとも滋賀1区では、前原誠司議員の秘書を努めていた斎藤アレックス議員(国民民主党、比例当選)を共産党も野党統一候補として認定しています。

激戦制した一本化/62小選挙区で野党勝利
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-11-02/2021110203_01_0.html

また、共産党は玉木雄一郎議員の選挙区など、国民が候補を立てている選挙区すべてに対立候補を立てたわけではありませんでした。

千葉県から選出された立憲民主党の議員は、オリジナルの立憲民主党の議員3人すべてが落選し、野田佳彦議員と新人の本庄知史議員(千葉8区選出、岡田克也議員の元秘書)を除く小選挙区選出議員2人と比例区選出議員1人が旧希望の出身となっています。

一方、れいわ新撰組についても、多ケ谷亮議員(千葉11区落選、比例区当選)も17年は千葉11区で旧希望から立候補していたし、今回は東京22区でれいわから立候補した櫛渕万里氏も17年は千葉3区で旧希望から立候補していました。

このように国民民主党とその前進である旧希望を出身とする議員や候補者が立憲4野党の枠組みと接点があるのが現状です。

今回、国民民主党が小選挙区で候補者を立てた20選挙区中、立憲4野党も候補者を立てた13選挙区で立憲4野党が勝利した選挙区は1つもありません。

野党候補の統一は目的ではなく手段、必要十分条件ではなく必要条件なのであり、票レベルでの一本化を伴う必要があります。いくら立憲4野党を野党選挙共同の枠組みだと心理的に認定してみたところで、共産党程度の勢力を持つ国民民主党からも候補者が立っていれば、票レベルでは分裂選挙区なのです。

国民民主党が維新の会と国会で連携する動きを見せています。ツイッターなどではあたかも国民民主党をあちら側に追いやってもいいかのような言説が幅を利かせています。

立憲民主党は明らかに共産党より国民民主党に配慮した候補者擁立を行っています。国民民主党をあちら側に追いやる言説で立憲4野党に有利な状況が生まれるのか、選挙で勝てる条件が作られるのか、冷静な対応が求められます。


太田光征
posted by 風の人 at 14:49 | Comment(0) | 一般

2021年11月07日

2021年衆院選:維新の比例区得票率は14年の15.7%から旧希望の党経由で微減して14.0%と元に戻った格好

2017年衆院選の分析から、維新と旧希望の党の関係に関する部分(南関東ブロック)を抜粋・転載しておきます。

私も17年衆院選の前を忘れていましたが、結局、2021年衆院選は、旧希望の党を経由して、14年の維新の比例区得票率15.7%が微減して14.0%と元に戻った格好です。

(7)「維新」という看板が「希望」に――看板の中身は旧民進

立憲3野党以外についてみると、千葉県での比例区得票率の構成は、14年の維新の党の13.9%と次世代の党の3.6%が17年には日本維新の会の3.9%と希望の党の17.3%へと統合・再編されました。公明党の比例区得票数の減少分45,875票は自民党の増加分19,100票を上回っているので、公明の減少分は生活の党の14年衆院選の2.9%分と合わせ、一部が希望などに流れたものと思われます。
維新は南関東で14年の5人から17年の1人に激減しています。南関東で当選した希望の党議員5人全員が民進党出身です。
結局、南関東でいえば、「維新」という看板が「希望」に変わったものの、希望の看板の中身は旧民進ということになります。ついでに、南関東で当選した無所属候補も全員が民進出身です。


太田光征
posted by 風の人 at 17:37 | Comment(0) | 一般

2021年衆院選小選挙区における野党統一効果

野党統一効果.jpg日本のメディアは「悪夢の自公政権」や「悪夢の大阪維新府・市政」という評価の言葉を普及させるべきところ、旧民主党政権を批判する報道を繰り返してきましたが、2021年衆院選の結果についても、野党選挙共同にネガティブな印象を振りまきたいようです。「不発」という言葉を使って。

この「不発」という評価は、メディアが衆院選報道をさぼったことについてこそ当てはまるもので、野党選挙共同についてはまったく当てはまりません。

メディアも伝えている通り、今回は与野党接戦が大きな特徴なのであり、野党選挙共同がなかったら、多くの野党統一候補が落選したことは、誰にとっても明らかなのに、野党選挙共同の成果を客観的・正当に評価しないことは、常識的・確率的にあり得ません。

野党選挙共同に成果があったことは明々白々なのです。既存メディアが伝えないので、市民が伝えるしかありません。小選挙区における野党選挙共同の成果について、下記が分かります。

1.62の野党統一選挙区で勝利、しかもかなりが接戦であった。
2.野党候補の合計得票率が与党候補を上回っているため、野党候補の一本化が実現していれば与党候補に勝てたであろう選挙区が5選挙区に上る。
3.野党候補の合計得票率が与党候補と比べて得票率ポイント5%以内の差にあるため、野党候補の一本化が実現していればかなり健闘していたであろう選挙区が7選挙区に上る。
4.野党統一候補が得票率ポイント5%以内の差で惜敗した選挙区が34選挙区に上る。
5.つまり、勝利した62選挙区に加え、潜在的に勝利できる可能性が高い接戦区は46選挙区に上る。

このどこが「不発」なのですか。野党選挙共同の不徹底は反省されるべきですが、その成果も確認されなければなりません。既存メディアには民主主義インフラとしての責任を果たしてもらいたいものです。


太田光征
posted by 風の人 at 14:23 | Comment(0) | 一般